『雲を紡ぐ』とホームスパン

直木賞候補作になった『雲を紡ぐ』(文藝春秋)が、やっと順番が回ってきて、読むことができました。(出版からすでに一年が経過・・・・(笑))

この本を読もうと思ったのは、盛岡のホームスパン(羊毛を手で紡ぎ、手織りすること)が題材になっているから。

羊毛の織物といえば、そうです、私の大好きなタータンです(*^▽^*)
今は機械化され、手で紡いだり織られることはほとんどありませんが、機械化される前は当然、手紡ぎ、手織りでした。

イギリスのホームスパンが日本に伝わったのは明治時代だそうで、大正時代に日本政府のめん羊飼育奨励により、岩手でもホームスパンが始まります。
戦後、ホームスパンが衰退する中、岩手では継続され、現在、岩手は全国生産額の約8割を占めるほど、ホームスパンが活発です。

私自身は手織りはしませんが、手織りの織物は大好きです。もちろん、それはタータンが大きく関係しているのですが(^^;

2019年に、岩手県立美術館で『タータン ~伝統と革新のデザイン~』が開催され、この展示会に関わらせていただいた私は、記念講演会をさせていただいたのです。

その講演会には、岩手のホームスパンに携わられる方々が、足を運んでくださいました。本当にありがたく、うれしくて、緊張しました( ̄▽ ̄;)
織りのプロの方々を前に、タータンのお話をさせていただいたのですから・・・・Σ(゚Д゚;≡;゚д゚)

2年前のことなのに、新型コロナウイルスの感染拡大で、かなり昔のことのように感じられます・・・

講演会の時には、手紡ぎを愛する方々のための雑誌「SPINNUTS(スピナッツ)」代表の本出さんにお声かけいただき、ホームスパンの職人さんの取材に同行させていただきました。
本当に貴重な体験で、ホームスパンの魅力を肌で感じた時間でした。

その岩手のホームスパンが、ばらばらになりかけた家族をつなぐ、というお話が『雲を紡ぐ』です。

「美しい染めや織りが好きです。気に入った布を眺めたり、使ったりしていると心が弾みます」と言う作者の伊吹有喜さん。

「時代の流れに古びていくのではなく、熟成し、育っていく布。その様子が人の生き方や、家族が織りなす関係に重なり、この『雲を紡ぐ』を書きました」

ともお話されています。続きは以下のサイトでどうぞお読みください。
https://books.bunshun.jp/articles/-/5272

動画でもそのへんをお話されています→https://www.youtube.com/watch?v=dJiMgXbp6Qs

ね、読みたくなったのではありませんか?

いじめにより登校拒否になった主人公の美緒。長い間疎遠だった、盛岡の祖父のところへ家出してしまう。祖父はホームスパンの職人で、美緒はそれを手伝ううちに、織物の美しさ、あたたかさを実感していく・・・

お話の中には、盛岡のカフェや、有名なパン屋さんなどが実名で登場します! ああ!私は時間がなくて、そうしたカフェめぐりもほとんどできませんでした。
「ふかくさ」や「クラムボン」や「機屋」・・・。
登場人物のいきつけのカフェの描写を読んでいると、行きたい、盛岡行きたい!熱が再燃。
宮沢賢治ゆかりの場所もめぐりたいし、早くコロナ、収まってくれ~~~と祈るばかりです。
この時に宮沢賢治関連で行けたのは「林風舎」と「光原社」のみですので・・。

そして、美緒の祖父は、民藝運動にも関わってきたという設定で、描写の中にも民藝に影響された家具などの描写が。私は民藝にも興味があるので、こちらもツボ。

そしてそして、イギリス好きにはたまらないツボもたくさん。
美緒の母は、イギリスの児童文学が好きでイギリスに留学した経験があり、祖父の家のベリーの生垣を見て、「のばらの村のものがたり」みたいだ、と言います。
すると祖父はそのお話を知っていて、絵本に出てくる”ウィーバー”は、まさに私の家業だよ、と言うのです。そしてイギリスの生垣を模してあの生垣を作ったんだ、と言うのです!

この祖父はたたものじゃないのです。盛岡の銘菓クルミゆべしを食べた母親が、ターキッシュ・デライトみたいだと感動すると、祖父は『ナルニア国ものがたり』だな、と応じて、話が盛り上がる(ギスギスした関係の二人が!)。
イギリスの文学にお詳しいんですね、と尋ねると、詳しくはないが、私たちは英国生まれの毛織物を作ってきたのでね、と答える祖父。かっこいいですよね!

物語にはウィリアム・モリスの布も出てきて、そこからアーツ&クラフツ運動の話にも。
イギリス好きなら、ニヤニヤしてしまいますよ~。

2019年に買ってきた、盛岡のタウン誌「てくり」や、てくり別冊「岩手のホームスパン」の本を出してきて、またじっくり読みました。

カフェめぐりもそうですが、ホームスパンのお店めぐりも、今度はゆっくり時間を取ってしたいとしみじみ思いました。

そうそう、物語の中に、宮沢賢治の「水仙月の四日」というお話が出てきます。私はこのお話のことはまったく覚えておらず、これまた本棚から宮沢賢治の本を出してきて、「水仙月の四日」を読みました。

記憶に残っていないほどなので、印象が薄かったのだと思いますが、このお話の赤い毛布をかぶった子どもと、赤いショールにくるまれて過ごしていた美緒とを重ねているところが、伊吹さん、うまいです。

そんなこんなで、宮沢賢治やら、イギリスの児童文学やら、民藝やら、はまるツボがたくさんあって、すっかり物語にはまってしまいました。

ご興味のある方はぜひ読んでみてください。岩手に行きたくなりますよ!
ホームスパンを見てみたいと思うはずですよ!

それから「SPINNUTS」104号 日本と英国の毛織物特集ページで、私、タータンとツイードについて寄稿させていただいています。こちらも、ご興味がありましたら、読んでみてくださいね。

 

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