『ロンドン・デイズ』

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)さんが好きだ。鴻上さんは、劇団「第三舞台」主催者で、劇作家であり演出家でもある。
でも、TVに出たり、ラジオを持ったり、エッセイを書いたりと、とにかく多彩に活躍している人。

私は第三舞台の劇は見たことがなくて(!)、鴻上さんのエッセイがおもしろいのでよく読んだ。彼が司会を務めた「地球ZIGZAG」も欠かさず観ていた。

雑誌編集をしていたときに、編集長に頼み込んでインタビューページに取り上げてもらい、実際にお会いできたときは天にものぼる気持ちだった。カメラマンが鴻上さんファンの私のために、鴻上さんとのツーショットの写真を撮ってくれて、それは宝物になっている。だいぶ、だいぶー昔の話ではあるが。

しばらくご無沙汰していて、この間、図書館で鴻上さんのエッセイを見つけて読んだ。

『ロンドン・デイズ』(小学館)と『ドン・キホーテのロンドン』(扶桑社)だ。

1997年から一年間、鴻上さんがイギリスのロンドンで生活していたことを初めて知った。文化庁の芸術家在外研修員派遣制度を利用して、ギルドホール音楽・演劇学校に通い、生徒として俳優教育のワークショップを学んだという。そのとき39歳だったとか。

一年間の短期留学は認めない、数百倍の入学倍率という超難関演劇学校に、文化庁からの派遣生としてなんとか許可をもらったはいいが、「語学的な問題のために授業を理解できず、それによって授業の進行が妨げられることがあれば授業への参加をただちに禁止する」という条件のなかで、英語と闘いながら学んだ詳細が『ロンドン・デイズ』のほうに書いてある。(『ドン・キホーテのロンドン』のほうは雑誌SPAに連載された軽い読み物)

英語の読み書きはできるのに、聞き取れない(ヒアリングができない)苦労。私はこれを読んでいて本当に共感した! 気持ちが痛いほどわかった。私もカナダでそうだったからだ。分かっている単語が聞き取れない時に落ち込む、というのも同感!

「外国で生き残る英語は、7割が聞くこと、2割がしゃべること、読むことが1割。書くことなんて無視していいと思う」という鴻上さんの意見にも同感だ。相手の言っていることを聞き取ることがどれほど難しいか…。ネイティブの話すスピードは早いのだ。私は何度も泣いた。

おまけに、鴻上さんは、アメリカではなく、イギリスへ行ったのだ。つまり、クイーンズイングリッシュ。おわかりだと思うが、イギリス英語は、アメリカ英語に慣れ親しんでいる日本人には、ちんぷんかんぷんなのだ。
2回ほど旅行をしただけの私だが、旅行中、つくづくイギリス英語がいやんなってしまったことを思い出す。イギリス英語といっても、階級によって言葉が全然違う。そのことも、鴻上さんは書いている。階級が高い人の英語ほどわかりやすい、と。

鴻上さんは、英語がわからなくて苦労したことをおもしろおかしく書いているけれど、私はその裏にあるもどかしさや孤独感などがわかってしまい、また、鴻上さんがものすごく英語を勉強されたんだろうな~ということもうかがえて、ますます尊敬してしまった次第です。あ、でも、エッセイは全然暗くなくて、おもしろくて笑えるんですよ。

鴻上さんのHPをのぞいてみたら、ワークショップを全国で展開しているようだ。演劇のことは全然わからないけど、鴻上さんが夢に向かって進んでいるのは感じられた。それに、ワークショップは俳優を目指す人にばかりでなく、人間として必要なことだとも書いてあったから、そういう意味でもワークショップを広めていきたいのだろう。

なんだか、私もがんばらなくちゃ、と思って元気が出た。私も同じ制度を利用して外国行きたいな、なんて思って調べたら、文化庁の芸術家在外研修員派遣制度っていうのに、作家は含まれていなかった…。

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