長野まゆみさんの作品

ここ数ヶ月、長野まゆみさんの本を集中的に読んだ。長野さんは人気作家なのだが、今まで手にしたことがなかった(あまのじゃく)。

だが、そろそろ読んでみてもいいかなーと思い、『鳩の栖(すみか)』を借りてみた。

なんなんだ、この静かな雰囲気は…そして、じーんとくる感動。ふるきよき昭和30年代あたりを思わせる、ノスタルジックな空気。漢字が多くて独特の文体が、読みにくいのだが、なれてくるとどうということはない、というか、それが長野さんの作品の特徴なのだとわかった。

そのあと、『兄弟天気図』、『コドモノクニ』『海猫宿舎』『時の旅人』と次々に読んでいく。

やはり、昭和30年代あたりの、一昔前の日本が舞台のものが多く、出てくるのが男の子ばかり、というのが特徴のようである。
私自身も、長野さんと同じく女の子だが、物語を書くときにはなぜか、主人公を男の子にしてしまうことが多い。私の子どもが男の子だから、というのはまったく関係がないが、なぜ(女の子が欲しかったのに)私に男の子が授かったのかはなんとなくわかる。

ま、自分の子はさておき、男の子ばかり出てくる長野さんの作品は、とても気持ちがいい。登場人物は能天気な男の子ばかりではなく、むしろ、悲しみや寂しさを抱えた、影のある男の子が多いが、作品全体がさっぱりとしているというか、澄んでいるというか、透明感がある。そこにファンタジーの要素も加わるので、一種独特の、不思議な魅力がある。タイトルもいいし。

誰かが、長野さんの作品には宮澤賢治の雰囲気がある、といっていたが、長野さんは『賢治先生』という作品も書いているし(まだ読んではないが)宮澤賢治が好きなのは明らかだから、影響は受けているはず。でも、彼女独特の世界を創り上げているところは、さすがだ。誰にでもまねできる世界ではない。

もともとはデザイナーだったという長野さんは、挿絵も自分で描く。ちょっと同人誌的な、漫画ちっくな絵。個人的にはあまり好きな絵柄ではないが(ファンの人ごめんね)、自分の作品に自分で絵を描くというのは、まさに理想的なカタチだと思う。

長野さんの作品はおもしろいが、全部が全部、私の好みだったともいえない。数多くの作品をうみだしているなかで、私が読んだのはほんのちょっとだが、そのなかでいちばんのお勧めはやはり『鳩の栖』。『海猫宿舎』と『兄弟天気図』もいい。猫が好きな人には『夏至祭』がお勧め。

『時の旅人』は、私の大好きなアトリーの作品と題名が同じなので読んでみたが、ちょっとわからない部分が多かった。

『鳩の栖』に収録されている短編の続編だということで、『紺極まる』を読んでみたら、これは…ちょっと…。男の子ばかり出てくるところが私は好きだと書いたが、それがボーイズラブにまで発展すると、興味はなくなる。前にも書いたが、作品の中の性描写に耐えられないので、その要素がのぞくこの作品には驚いた。こういう展開になるとは…ちょっとがっかりだった。

もちろん、いやらしさはまったくないのがさすがだし、男とか女とかの枠を超えた、純粋な愛だと捉えられる範囲ではあるが、それが新しいカタチなのかもしれないが、私にはちょっと受け入れられないものでした(すみません)。

インターネットを見ていたら、長野さんを「ボーイズラブを文学にした人」と書いている人があったが、ああ、なるほど、と思いながら、私は、そういう作品ばかりではないのに…と思う。
残念ながら、私はボーイズラブを受け入れられないが、そういう作品にも、単なる好きだ嫌いだではない、奥の深さは感じており、それは作家としての長野さんの力量なのだろう。

いずれにせよ、『鳩の栖』ほか、気に入った作品は“ヨセフを知る一族”(『アンの夢の家』参照)の本として、本棚にちゃんと並んでいる。

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