加納朋子さんの『スペース』

加納朋子さんの『スペース』(東京創元社)を読んだ。

加納さんは、私の好きな日本人作家の一人。年齢も私とほとんど変わらないし、作品もわかりやすくて、親しみがあって、おもしろいので大好きだ。作品はほとんど全部読んでいるし、文庫はすべて持っている。

加納さんは、ジャンルでいうとミステリー作家に入るらしい。確かに、作品はすべて、事件が起こって、それの謎解きという形、つまり推理小説ではある。

でも、加納さんの作品は、血まみれ、怨恨、殺人といった類の事件を扱っていない。元来、殺人をおもなテーマにする推理小説は、私の趣味ではなく、これだけミステリーブームになっても、読むことはなかった。巧妙な謎解きよりも、読んで幸せな気持ちになる作品のほうが好きだからだ。

そんな私が、加納さんのミステリーを読むのは、殺人を扱っていない(扱っているものもあるにはあるがどろどろしていない)ということと、身近にあるちょっとした事件を取り上げているからだろう。

「いつだって、どこでだって、謎はすぐ近くにあったのです。
何もスフィンクスの深遠な謎などではなくても、例えばどうしてリンゴは落ちるのか、どうしてカラスは鳴くのか、そんなささやかで、だけど本当は大切な謎はいくらでも日常にあふれていて、そして誰かが答えてくれるのを待っていたのです。」(『ななつのこ』より)

と作品の中に書いているように、殺人とはおよそかけ離れたところにいる私たちのそばに、小さな、大事なミステリーは隠れているのだよ…、ということを教えてくれている。加納さんは、背伸びせず、等身大の自分のミステリー世界を創り上げた。そこがおもしろいのだ。
血は流れず、私たちと同じように普通の女の子が出てくる、だけども、え?と思うような出来事が起こる…。それで、それで? と、友だちに尋ねるような気持ちで、ストーリーを追っていってしまう。

そして、そこには恋愛の要素とか、家族愛とか、さまざまな背景があって、小さな謎が解き明かされたときの安堵感っていうのか、解放感というのか、さわやかさというのか…気持ちのよさがあるのである。謎は解けても結局は人が死んでいる殺人事件には、無念さとか後悔とかが残る気がするが、加納さんの場合は読んでさわやかな気持ちになるミステリー!である。

かと思うと、『ガラスの麒麟』のように、人間の内面をえぐるような作品もある。いずれにせよ、どれも、ただのミステリーに終わらない。

『スペース』は、加納さんのデビュー作『ななつのこ』と、その続編『魔法飛行』の、そのまた続きにあたる。『魔法飛行』が出てからすでに十年以上が過ぎている。私も、『ななつのこ』? 『魔法飛行』? ありゃー、どんな作品だったっけ? と読み返してしまった(^_^;)

読み返した後に『スペース』を読んだら、とっても幸せな気持ちになりました♪ それまでの疑問が全部解決したこともそうだし、主人公の恋が実ったというところも、ほのぼのと染み入ってきました。こういう恋愛小説は大好きです。

『ななつのこ』と『魔法飛行』は、本屋さんで表紙の絵に引かれて買ってしまった本。内容もとてもよかった。文学少女が主人公ということもあって、さまざまな文学作品の名前が出てくるが、『赤毛のアン』はなんと数箇所、出てきます! それも、タイトルだけでなく、アンのセリフが。加納さんはアンが好きなんだな~って思ったら、ますます気に入ってしまいました。

ミステリーともファンタジーとも、童話っぽいともとれる不思議な作品を書く作家がいたんだ、と思って、それから続けざまに加納作品を読んで、すっかりはまってしまった。どれもいいが、お気に入りをあげるとすれば、『いちばん初めにあった海』と『ささらさや』。

『ささらさや』の続編が『てるてるあした』で、『てるてるあした』はドラマにもなっている。実はまだ『てるてるあした』は読んでいない(^_^;) ので、ドラマもまだ観てない。『てるてるあした』を読むにしても、まず『ささらさや』を読み返さねば…。

たくさん本を読んでいるので、読んだ先から内容を忘れていく…たくさん本を読んでいるからではなく、忘れっぽいだけなんですけどね(^_^;) それもあって、日記に本の感想を書いているわけなんですけど。

あ、そうそう、加納さんの最近の文庫本『虹の家のアリス』もよかった! これは『螺旋階段のアリス』の続編で、不思議の国のアリスが好きな読者ならにんまりするだろう、物語と絶妙にからみあっているのだから。
こんなふうに、自分の好きな文学作品をうまく自分の小説に織り交ぜられたら素敵だろうな。

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