梨木香歩さんの作品

梨木香歩さんの『ペンキや』(理論社)を読んだ。
とてもいいお話だった。

人々が塗ってほしいと願う色を出せるペンキやの一生。依頼されていたユトリロの白を塗り上げ、満足そうに亡くなったペンキや。おとうさんの形見の刷毛はどこにもなかった。

ラストの一行「不世出のペンキや ここに眠る」が、深く、深く心に響いてくる。ペンキやになってみたいな~、なんて思わせてしまう、不思議な物語だった。

梨木さんは、私の大好きな作家の一人である。ほとんどの作品を読んでいるし、文庫本も持っている。

『ペンキや』と同じシリーズ(絵本の体裁をとっているが短編小説のような雰囲気)の『マジョモリ』も『蟹塚縁起』も、また違った雰囲気があり、やはり不思議な魅力を持っている。

梨木さんの書くお話は、ファンタジーといえばファンタジーだし、だけど現実味もあって、ちょっと怖くて、よくわからない部分が残っている。『裏庭』(理論社)が特にそうで、おもしろくてずんずん読んでいくのだが、最後は「???」と、よくわからないまま終わってしまった、というのが正直な感想だ。

よくわからないのだが、でも、なぜか「おもしろかったな~」と、その微妙で不思議な世界にまた引かれてしまうのである。

新刊の『沼地のある森を抜けて』も、ぬかどこがしゃべる、というのがおもしろくて夢中で読んだが、最後のほうはまたしても「???」でした。ちょっと性描写なんかも出てきて、私的には苦手というか、だめな方向性にいってしまった。

私が恋愛小説を好んで読まないのは、性描写がよく出てくるからだ。私は小説にそういう場面を求めも、期待もしていない。もちろん、意図があってのことだとは思うが、私の趣味ではない。もちろん、『沼地のある森を抜けて』の描写は、恋愛小説のそれとはちょっとニュアンスが違うが、それでも、ああ、こうきたか…という感じで、なんだかがっかりしてしまったのが正直なところだ。

私がいちばん好きな作品は『西の魔女が死んだ』(小学館)である。読み終わったとき、「これよ、こういう物語が書きたかったんだよ~」と、うれしくてたまらなかった。

この物語に漂っている英国の息吹も好きだった。略歴を見ると、梨木さんは英国に留学し、児童文学者のベティ・ボーエンに師事した、とある。なるほど、それで『裏庭』にも、英国の風が吹いているんだな。

『西の魔女が死んだ』は、私が初めて読んだ梨木さんの作品だが、そのあとはむさぼるように『りかさん』(偕成社)『からくりからくさ』『エンジェル・エンジェル・エンジェル』(新潮社)と、続きの作品を読んで、日本的なものを描かせても上手なんだな~としみじみと、ファンになった。

日本的といえば、二番目に好きな作品『家守綺譚』(新潮社)も、日本的である。ちょっと昔の雰囲気、日本家屋、掛け軸から出てくる友人…などなど、静かで淡々としていて、それでも不思議な出来事が起こるファンタジー的要素があって、続きがあるならずっと読んでいたいと思わせる。

梨木さんの作品は、ただ不思議なことが起こるんじゃなくて、目に見えない部分、存在が大きな要素となって関わっているところがいい。見えない世界は見える世界のすぐそばにあって、もっと身近なもの。決して空想話で終わらせない。自分の周りでも起こりそうな予感、現実感を与えているのが、魅力だ。
こういう作品を私も早く書けるようになりたいものです。

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