『皇女アナスタシアの真実』

映画『名探偵コナン 世紀末の魔術師』がおもしろかったと言ったら、友人から映画『追想』を勧められて観た。
どちらも、ロシアのロマノフ王朝ニコライ二世一家が背景になっている。

ロマノフ王朝については、今までも気になっていたが、それ以上に知りたくてたまらなくなったので、図書館で本を検索してみた。何冊か手にしたが、ちょっと内容が難しい。その中で、手ごろでわかりやすい本が、この『皇女アナスタシアの真実』(柘植久慶著、小学館文庫)だった。

1994年に、ニコライ二世の四女・アナスタシアを名乗るアンナ・アンダーソンのDNA鑑定の結果が出て、彼女はアナスタシアではなかったことが判明した――という事実を、作者が疑問視するところからはじまっている。数多くの文献をあたり、自らも取材して、やはりアンナ・アンダーソンはアナスタシアだったという結論にまとめている。

ニコライ二世がアレクサンドラと結婚するところから、本の主人公であるアナスタシアを中心に歴史を追って話が進んでいくのだが、それがとてもわかりやすく、おもしろいのだ。淡々と進んでいくところもいい。

アレクサンドラ皇后は、イギリスのヴィクトリア女王の外孫にあたると知ると、ヴィクトリア女王時代びいきの私としては、いやでものめりこんでしまう。
ヴィクトリア女王は幼少時、ドイツで育てられたそうである。
アレクサンドラはドイツ出身だが、イギリス式の教育を受け、王家ではもっぱら英語が用いられていたという。また、王家とはいえ、ニコライ二世もアレクサンドラも浪費を嫌い、アレクサンドラの影響でドイツ風の質素な(私たち庶民からすれば豪華だが、王室の暮らしとしてはかなり質素なほう)暮らしをしていたという。それが、のちに結果としてはアナスタシアに幸いすることになるのだが、そのへんは本を読んでね。

愛人だの、同性愛だの、薬物中毒だの、王室の隠れた(乱れた?)一面が赤裸々に書かれてあり、王室という特殊な環境と、ロシア革命にいたる経緯、そして政治のつながりなども、これを読むとよくわかる。物事の表と裏、体裁と本音、隠蔽工作、正義と裏切り、高慢と思いやり…そんな人間的などろどろした部分が、歴史の根底にはあって、アナスタシアは生き残ったがゆえに(私はアナスタシアが、アンナ・アンダーソンだと信じてしまっているのでこう書いてますが(^_^;))、一生涯、それに翻弄されることになる。

アナスタシアの側からすれば、イギリスは悪者(実際ひどいことしてるんだけどね)で、あのヒットラーは支持される人間となるし…。物事をどの面から、誰の立場で見るかで、まったく違ってくるのだ。歴史は特にそれが顕著にあらわれるだろう。

アナスタシアは、自分がアナスタシアだということを証明できずに亡くなったことがどんなにかくやしかっただろうと思う。でも、反面、証明する機会はあったのだから、高慢をすて、自分の協力者にもっと寛大であればよかったのに…。などと、本当にいろんなことを考えてしまいました。

映画になったりすると、どうしても美化してしまってアナスタシアには汚点はないと信じてしまうけれど、現実にはさまざまな問題があるんですよね。もとをただせば、アレクサンドラ皇后の子育てにも考えが及ぶし…。

エピローグに書かれてあるイギリス王室の崩壊…の予感についても、ちょっと寒気がしたりして。

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